粉骨は“かわいそう”? かわいそうと感じる理由と、実際の粉骨についてお墓ディレクターが解説。
■粉骨とは
粉骨とは火葬されたご遺骨について、ご遺骨と分からない程度(1~2mm)に砕き粉末化(パウダー化)することです。
粉骨を行う主な理由は「散骨などの自然葬をするため」「ご遺骨の容量を減らすため」「手元供養を行うため」などで、お墓じまいのあとご先祖の遺骨をひとつにまとめる際などにも活用されています。
以下、粉骨のメリット、デメリットをまとめました。
〈粉骨のメリット〉
・ご遺骨の容積を半分以下に減らすことができる。
粉骨しパウダー状にすることで、ご遺骨の容積を約1/3~1/5程度の量に減らすことができます。
骨壺の大きさが決められていて入りきれない場合や、お墓や納骨堂の納骨室がいっぱいで新しい骨壺が収容できない場合などの“ご遺骨のおまとめ”にも活躍します。
・ご遺骨が自然に還りやすくなる
厚生労働省のガイドラインによって、散骨を行う場合はご遺骨と分からない程度に粉末化することが求められています。
また、パウダー化することによって海水にも速やかに溶け、ご遺骨がスムーズに自然に還ることが出来るようになります。
・手元供養品などに封入できるようになる。
近年新しい供養の形として話題を集めている「手元供養」。
手元供養品は日常生活のごく身近な場所で供養できることが特徴ですが、そのためサイズはコンパクトなものがほとんどです。
パウダー化して容量の小さくなったご遺骨なら、ミニ骨壺やアクセサリータイプの手元供養品にも封入できるようになります。
・見た目がよくなる
火葬後のご遺骨やお墓じまいで取り出したご遺骨は当然ながら見ためは「人骨」です。
そのため、家の中に置いておくことに抵抗を感じる人もいらっしゃるでしょう。
特に手元供養の場合はリビングや寝室などに設置し、他の家族やお客様などの目に触れることもあるため配慮が必要でしょう。
ご遺骨をパウダー状にすれば見ためも「ご遺骨感」が無くなり、「ご遺骨」を家に置いたり、アクセサリーにして身につけたりすることもできるようになります。
・分骨がしやすくなる
パウダー化したご遺骨はどんな形状のケースにも入れられますので、兄弟などでご遺骨を分ける=分骨する際にも取り扱いしやすくなります。
手元供養の一種あるミニ骨壺にも入れることができるので、分骨先が多い場合も安心です。
〈粉骨のデメリット〉
・粉骨に反対する人もいる。
粉骨は焼骨したご遺骨を砕き粉々にするため、親族の中には「故人がかわいそう」と感じる人もいます。
きちんと説明すると理解してもらえることも少なくありませんが、理屈ではなく感覚的な問題の場合は、納得してもらえないこともあります。
・容器が破損したり紛失した場合、もとに戻せなくなることもある。
粉骨したご遺骨はいわゆる「粉状」のため、封入する際にこぼしたり、事故や災害などで容器が破損してしまうともとに戻すのが難しくなります。
・散骨したご遺骨は水分を含みやすくカビが生えてしまうこともある。
散骨したご遺骨はパウダー状になっているため、水分を含みやすくなります。
通常の保存状態であれば問題はありませんが、できるだけ多湿の環境は避けて早めに手元供養品に封入しましょう。
・焼骨には発がん性物質が含まれているので、個人で行う場合は危険性がある。
火葬したご遺骨には六価クロムという発がん性物質が含まれています。
もともと自然界には三価クロムが存在していますが、六価クロムは焼骨の際に火葬場の炉から発生するもので、水に溶けやすく、海に流れ出てしまうと海洋汚染の原因となります。
専門の業者は粉骨の際六価クロムを無害化する処理を施しますので散骨を行っても問題ありませんが、個人で粉骨を行う場合は注意が必要でしょう。
■粉骨がかわいそうと思われる理由を実際の声から分析
・「骨を砕くことで故人が痛がっているような気がする。」
粉骨とはご遺骨を細かく砕く行為ですので、ご遺骨に手を加えることに「かわいそう」という感情を覚える人もいます。
しかし、もちろん亡くなった人に「痛い」という感覚はありませんし、ひいてはご遺骨の火葬自体を否定することになってしまいます。
「そんなことは理屈では分かっているけど、どうしても抵抗を感じる」という場合は、粉骨をやめてお墓や納骨堂にするか、どうしても粉骨の必要がある場合は専門の業者に依頼しましょう。
・「粉骨を検討しているけど、親戚から“縁起が悪い”と言われました」
宗教上の理由から「縁起が悪い」というイメージを持つ人もいます。しかし実はわが国の一般的な宗教の中で粉骨を禁止しているところはありません。
むしろ納骨場所が足りずご遺骨の管理が粗雑になる方が問題があり、粉骨してきちんと供養をする方が縁起がいいという考え方もあります。
どうしても不安な場合は信仰する宗教の専門家に相談してみると良いでしょう。
・「粉骨は法律違反では?そんなことをしたら故人がかわいそう…」
「粉骨は違法なの?」と質問を受けることがありますが、結論から言うと違法ではありません。
刑法190条に規定されている「死体遺棄罪を含む死体損壊等罪」では、ご遺骨やご遺体を壊すことを禁止していますが、供養を目的に行う粉骨についてはこの法律は適用されず、これまでに摘発された例もありません。
しかし、粉骨したご遺骨を海や山に撒く場合は、ご遺骨と分からない大きさ(2mm以下)まで細かく砕く必要がありますので注意ししまょう。
万が一粉骨せず、そのままの状態で散骨した場合は「死体遺棄等罪」に抵触し犯罪となります。
また、ペットのご遺骨を散骨する場合は法律違反にはなりませんが、周囲に対するマナーとして必ず粉骨しましょう。
■粉骨はかわいそうじゃない。しかし注意点はある。
粉骨について「かわいそう」と感じることは「感覚的な問題」であり、きちんと理解すれば決して「かわいそう」ではなく、むしろ心をこめた供養をするために行う行為であることが分かるはずです。
粉骨をしたあとに周囲からあれこれ言われて不愉快な思いをすることがないよう、あらかじめ注意点を押さえ、周囲の誤解を招かないようにすることも大切です。
・粉骨をする前に親族の同意を得ないと、親族間のトラブルに。
ご遺骨は、故人のご家族やご親族はもちろん、故人を大切に思う方にとってもかけがえのないものです。
例え故人の配偶者やお子様であっても、ご家族や親族の同意を得ないままに粉骨してしまうと思わぬトラブルを招いてしまうこともあります。
故人のために行ったことが逆に親族間の関係にヒビを入れてしまわないよう、粉骨をする前にご家族や親族に相談しましょう。
・個人で粉骨・散骨を行うのは問題が起こりやすい
火葬したご遺骨には発がん性物質が残っている可能性がありますので、個人で粉骨や散骨を行うのは危険です。
特に散骨する場合、発がん性物質の無害化処理をしない状態で撒くことは海洋汚染の原因となりますし、散骨する場所に配慮しないと地元の方々とのトラブルに発展することもあり得ます。
また粉骨は単にご遺骨を細かく砕くだけでなく、洗浄や乾燥などの工程もあり、決して簡単に行えるものではありません。
体力的な問題だけでなく心理的な負担がかかる可能性も考えられるため、最近では、海洋散骨や粉骨については多くの方が専門業者に依頼されています。
・粉骨してもご遺骨には変わらない。粉骨後の供養についてもきちんと考えておく。
粉骨するとご遺骨の容量を減らすことができ、手元供養品に封入することもできるようになります。
粉骨すると美しいパウダー状になり「遺骨」の印象が薄くなりますが、もちろんご遺骨であることに変わりはありません。
手元供養に入れたご遺骨がたとえ少量であっても、管理できなくなったらお墓や納骨堂、永代供養墓など法律で定められた場所に納める必要があります。
粉骨して手元供養を行う際は、管理できなくなったあとのご遺骨の行き先についても考えておくことが大切です。
■もう「かわいそう」とは思われない。心から安心できる粉骨のポイント
・あらかじめ親族にも説明し、理解してもらってから粉骨を行う。
・粉骨の作業は専門業者に依頼する
・粉骨後の手元供養は管理できなくなった時のご遺骨の行き先についても考える。
・散骨する場合は、条例や生活環境などにも留意し、できれば業者に依頼する。
・ご遺骨のかさを減らすための粉骨は、ご遺骨をきちんと供養するための有効的な手段のひとつ。
・一度粉骨したら戻せないので、不安に感じたり迷っている時はいったんやめる。
■粉骨を業者に依頼した場合。価格や包装法などについて解説。
粉骨業者に依頼すれば、遺骨のプロによる安心作業でご遺骨を美しいパウダー状にしてもらえます。
粉骨によってご遺骨の容量は約1/3~1/5になり、アクセサリーなどの手元供養品については納入まで依頼することもできます。
また、火葬後のご遺骨にはガンの要因とされる「六価クロム」が環境基準を大きく超えて付着していることがありますが、粉骨の専門業者の多くが専用の「六価クロム還元剤」を使用した無害化処理を行っています。
【お申込みの流れ】
①お申込み
②ご遺骨のお預かり
③ご入金
④粉骨作業
⑤ご遺骨のお返し
【粉骨の価格の目安】
※参考:有限会社 縁(鹿児島県南九州市川辺町清水9860)
2寸・2.3寸 | 5,500円 |
3寸 | 7,700円 |
4寸 | 11,000円 |
5寸・6寸 | 14,300円 |
7寸 | 16,500円 |
8寸 | 22,000円 |
尺寸 | 27,500円 |
■粉骨はかわいそうなことではない。これからの時代の供養と不可欠な粉骨とのつきあい方。
粉骨は決して故人にとって「かわいそう」な行為ではなく、むしろ、故人を大切に考え供養をきちんと行うための手段の一つであることを解説しました。
粉骨が「かわいそう」だと思われる大きな理由は、これまであまり一般的ではなかったため、理解が広がっていないことにあるでしょう。
しかし、きちんと説明すれば「粉骨をすることで手元供養や散骨ができるようになり、供養の選択肢が増える」「納骨堂やお墓の収容数を増やし、きちんと供養ができる」など、粉骨のメリットを理解してもらえると思います。
一方で粉骨にはデメリットもあります。一度粉骨をすると元に戻すことは出来ませんので、簡単に決断するのは危険です。
粉骨を検討する際はデメリットも理解したうえでご家族・ご親族と話し合い、不安があれば業者に問い合わせをして、納得してから依頼しましょう。
河野 文(お墓ディレクター2級、終活カウンセラー1級)