死産をされた赤ちゃんの火葬、届け出、その後のご供養について解説。
■赤ちゃんを死産した場合。手続き、葬儀、供養、悲しみの乗り越え方。
妊娠中や出産時に赤ちゃんが亡くなってしまう…そんなつらい経験をしたご両親、ご親族の悲しみは計り知れません。
しかし、死産をした後は行政への手続きや葬儀、火葬など、やるべきこと、考えなければいけないことがたくさんあり、赤ちゃんの死にゆっくりと向かい合うことができず、胸にぽっかりと穴が空いたような気分になっている…という方もいます。
ここではそうした「死産」という悲しい経験をされた際の火葬の方法、届け出、心のこもったご供養の方法などのほか、
悲しみの乗り越え方についても解説していきます。
■死産とは、法律的には妊娠12週以降に赤ちゃんが亡くなった場合のこと
死産の定義は実は「医学的定義」と「法律上の定義」では少々異なります。
ここではその両方を解説します。
〈医学の定義【産婦人科学会】〉
死産とは、医学的には妊娠6ヶ月(22週)以降に赤ちゃんが亡くなった場合を指します。
それ以前に赤ちゃんが亡くなった場合は流産となります。
・妊娠4ヶ月(12週)未満…初期流産
・妊娠6ヶ月(22週)未満…後期流産
・妊娠6ヶ月(22週)以降…死産
〈法律の定義〉
法律面の定義では、死産とは妊娠4ヶ月(12週)以降に赤ちゃんが亡くなった場合を指します。
また出産はできたものの、間もなくして赤ちゃんが亡くなった場合も「死産」になります。
・妊娠4ヶ月(12週)未満…流産
・妊娠4ヶ月(12週)以降…死産
役所への届け出などは法律に基づいて行うことになります。
よって、妊娠4ヶ月(12週)以降に赤ちゃんが亡くなった場合は死産となり、戸籍法によって市町村役場などに「死産届」を提出しなければならないと定められています。
死産届を提出するためには、医師に「死産証書」または「死胎検案書」を作成してもらう必要があります。
死産届を提出後、火葬許可証を作成してもらい、火葬を行うことになります。
●赤ちゃんを死産した場合の届け出、葬儀、火葬、埋葬までの流れ
①死亡届の提出
妊娠12週以降に亡くなった場合は、お住まいの市町村に「死産届」または「死亡届」を提出しなければなりません。
週数に関わらず、母体内で胎児が死亡した場合と出生後に亡くなった場合は届け出の内容が異なります。
・母胎内で胎児が死亡した場合…「死産届」を提出。戸籍は作られない。
・妊娠22週以降、出生後に亡くなった場合…「出生届」を提出後に「死亡届」を提出。
子供の名前も付ける必要がある。
※提出期限は死産した日を含めて7日以内
②ご遺体の安置
妊娠12週以降は火葬が必要となります。
しかし「墓地、埋火葬に関する法律」によって、妊娠24週以降の死産の場合は亡くなってから24時間以内は火葬を行うことができないことになっています。
その場合、火葬までご遺体をご自宅で安置される方が多いようです。
〈ご遺体の安置方法〉
棺と骨壺を用意します。
ご自宅に安置する場合は、ご遺体を保冷するドライアイスも準備しなければなりません。
葬儀社に依頼すればすべて用意してくれますが、依頼しない場合は5000円~数万円程度のドライアイス代の用意が必要です。
棺は葬儀社や病院で購入できますが、赤ちゃん用のかわいい棺を用意してあげたい場合は、葬儀社にその意思を伝えて探してもらいましょう。
また骨壺も赤ちゃん用の小さな骨壺を準備しましょう。
③葬儀
死産した赤ちゃんの場合、葬儀は行わないか、家族のみの小規模な葬儀を行う場合が多いようです。
火葬も、家族のみでお見送りされる方がほとんどです。
葬儀、火葬をどのようにするか、どなたを案内するかはご両親のお気持ちで決めてください。
〈葬儀の方法【例】〉
- 直葬…火葬のみ
- 家族葬…家族や親族のみの小規模な葬儀
- 一般葬…家族以外の方も参列。通夜や告別式などを実施。
〈死産した赤ちゃんのご葬儀の際の服装のマナー〉
死産した赤ちゃんのご葬儀に参列する機会はあまりないので、服装などのマナーに戸惑われる方もいらっしゃるでしょう。
基本的に一般的なご葬儀と同様に考えれば問題はありません。
喪服を着用しない場合は暗色系のスーツで。靴やバッグなども黒や紺色など目立たない色のものにしましょう。
④火葬
妊娠12週以降に死産した胎児は、「墓地、埋葬等に関する法律」で火葬が義務付けられています。
火葬場への立ち合いはご家族のみでも構いませんし、菩提寺の僧侶などにも同行してお経を上げていただくこともあります。
死産の場合は、火葬に参列する際必ずしも喪服を着用しなければならないということはありません。
黒、紺、グレーなど暗い色のスーツを着用し、華美なデザインの小物やアクセサリーなども控えれば喪服以外でも大丈夫です。
〈赤ちゃんの火葬の注意ポイント〉
死産した小さな小さな赤ちゃんの場合、火葬後にご遺骨が残らないこともあります。
遺骨を残したい場合は火葬場に事前に確認して「ご遺骨を残したい」という意志を伝えましょう。
火葬場によっては胎児専用の火葬炉を設けているところもあります。
⑤埋葬
妊娠12週以降の死産した赤ちゃんは「ご遺体」となりますので、「墓地、埋葬等に関する法律」に基づき、火葬後は墓地として定められた場所に埋葬するか、納骨堂などに安置することになります。
家族のお墓がある場合はそちらに埋葬することもありますが、小さな赤ちゃんの場合はご遺骨をミニ骨壺などに入れて自宅に置き、手元供養をする方も多いようです。
まだ悲しみが癒えていない時から埋葬のことを考える必要はありません。
49日法要までに埋葬しなければいけないということもありませんので、時間をかけてゆっくりと埋葬場所を決めてください。
⑥供養
死産をした赤ちゃんのご供養としては一般に下記のようなものがあります。
〈水子供養〉
「水子供養」とは死産、または生後間もなくして亡くなった赤ちゃんのご供養のことを言います。
水子供養は多くのお寺で行っていますが、菩提寺にお願いする場合は事前に水子供養を行っているか確認しましょう。
水子供養をする場合には下記のものを用意します。
・骨壺に入れたご遺骨(※手元に残っている場合)
・お布施…10,000円~30,000円程度が目安ですが、お寺に確認しましょう。
・お供え用の花とお菓子、おもちゃなど(お供えできるかお寺に確認しましょう)
・数珠
〈塔婆(とうば)供養〉
水子供養のひとつとして、塔婆を水子地蔵様にお供えする方法があります。
塔婆とは亡くなった人のご供養を願い立てる木の板のことで、亡くなった赤ちゃんの名前などを書き、水子地蔵の側に立てかけてご供養します。
〈墓所に埋葬〉
死産した赤ちゃんの場合、新しいお墓を建てる方は少ないのですが、先祖代々のお墓がある場合はご先祖様のご遺骨と一緒に亡くなった赤ちゃんのご遺骨を埋葬しても良いでしょう。
その場合、既存の墓所に水子地蔵の石仏を建てて、赤ちゃんの遺骨を納めることが多いようです。
〈手元供養〉
死産した赤ちゃんや、生まれてまもなく天使になった場合によく選ばれるのが「手元供養」です。
手元供養とは亡くなった方のご遺骨や遺灰などをミニ骨壺やアクセサリーの中に入れて、自宅の中や身につけて保管・供養する方法です。
「亡くなった赤ちゃんと離れがたい」
「一人きりでお墓に入れたら赤ちゃんが可哀そうだから、近くに置いておいてご供養してあげたい」
というご両親の想いに寄り添った供養方法でもあり、無理なくゆっくりと悲しみを癒すグリーフケアの意味もあります。
●死産した赤ちゃんをご供養し、ご両親の心を癒す、おすすめの「手元供養品」をご紹介
赤ちゃんにぴったりのかわいらしい手元供養品もたくさん出ています。
リビングやベッドサイドに置けるインテリアタイプの手元供養品もありますが、「すぐそばで赤ちゃんを感じていたい」という方にはアクセサリータイプの手元供養品もおすすめです。
ここでは赤ちゃんの手元供養にぴったりの手元供養品をご紹介します。
〈アクセサリータイプ〉
赤ちゃんのご遺骨や遺灰を入れてご供養するペンダント、ブレスレット、リングなどがあります。
特に人気なのが遺骨ペンダントで、ハート形や星形のもの、誕生石で作るペンダント、ご遺骨をそのまま入れることが出来るカプセルタイプのペンダントなどもあります。
金属アレルギーも身につけられるチタン製のアクセサリーもいろいろと用意されています。
しかし、アクセサリータイプの手元供養品は、急な雨に見舞われた時、ご遺骨まで濡れてしまわないか心配ですね。
気になる方は、生活防水に対応している手元供養ペンダントもありますので、購入する際の参考にしてください。
〈ミニ骨壺タイプ〉
骨壺というと一般的には5寸や7寸の、両手を使わなければ抱えきれない大きなサイズのものが使われていますが、2寸ほど、手のひらにのる程度の小さな骨壺もあります。
素材も一般的な陶器製だけでなく、金属製、ガラス製、純金製、木製などさまざまなものがあります。
価格帯はシンプルな陶器製のものは数千円ほどからありますが、素材によっては7万円ほどのものもあります。
「赤ちゃんのご遺骨を入れる」というと出来るだけかわいいデザインのものを選びがちですが、大切なご遺骨を守るために「防湿性」や「密閉性」「耐久性」にも配慮しましょう。
また仏壇が無い場合は、手元供養のステージの上にミニ骨壺、おりん、一輪挿しを置いてコンパクトな仏壇スペースを作る方法もあります。
これならマンションのリビングに置いても違和感がありません。
セットで販売している業者もあります。
その場合は単品で購入するより比較的リーズナブルです。
〈自宅墓〉
「きちんとご供養をしたいけれど、お墓参りに行くことが難しい」
「お墓を購入したいけれど、費用面が工面できない」
とお悩みの方に近年注目されているのが「自宅墓」です。
自宅墓とは、霊園や墓地等に建立するお墓ではなく、ご遺骨を小サイズの骨壺に入れてご自宅に置きご供養する「自宅の中の小さなお墓」です。
おうちのお好きなところに設置でき、毎日気軽にお参りができる、しかも価格面でもかなりお安く購入できることから人気を集めています。
自宅墓は通常の手元供養品より大きめのものが多いのですが、赤ちゃんの写真やご両親からのメッセージなどを飾ることができるステンドグラス写真立て付きの自宅墓も販売されています。
先祖代々のお墓がある場合は、分骨して、ご遺骨の一部のみ自宅墓でご供養するのも良いでしょう。
【まとめ】
■赤ちゃんを死産したら、無理に元気にならなくても大丈夫。
手元供養で赤ちゃんを身近に感じながら、ゆっくりと悲しみを癒していきましょう。
おなかのなかで赤ちゃんが亡くなってしまった場合や、生まれたばかりの赤ちゃんが天使になってしまった場合。
その悲しみはもちろん、すぐには癒えませんし、急いで癒す必要もありません。
自分を責めてしまう方もいますが、死産は誰のせいでもありません。
また赤ちゃんの死をすぐに受け入れられないのも当たり前です。
周囲の方は元気づけるつもりで
「早く元気になって」「いつまでも泣いていると赤ちゃんも悲しむ」
などと不用意な言葉をかけてしまうことがありますが、逆にご両親を苦しめてしまうこともあるので注意しましょう。
泣くことは心身ともに気持ちを落ち着け、心のデトックス効果にもなると言われています。また安眠効果があるとも言われています。
涙を我慢する必要はないのです。
赤ちゃんを死産したあとは、行政への手続きや葬儀、火葬、埋葬などやらなければいけないことも多く、ゆっくりと休める時間が取れないかもしれません。
しかし、ご両親、特にお母さんは体も心もとても疲れています。
まずは自分自身のことを第一に考えて、休める時にはしっかりと休息をとってください。
周囲に誰も相談する人がいない…という場合は。自治体の相談窓口を利用するのも良いでしょう。
その他、各地域で専門家や同じ体験をしてきた方々とサポートグループを作ったり、体験会なども開催されています。
一人で乗り越えようとせず、周囲のサポートも積極的に活用してください。
(終活カウンセラー1級、お墓ディレクター2級 河野)