粉骨は手元供養に必要か?粉骨したくない場合の対応策を解説
自宅に遺骨を保管する手元供養では、粉骨が選ばれるケースが多いです。なぜなら、粉骨をすることでさまざまなメリットがあるからです。
しかし、粉骨は跡形もなく遺骨を砕くことになるので、否定的な感情を抱く方もいらっしゃいます。では、手元供養で粉骨をしたくない場合はどうしたらよいのでしょうか?
手元供養での粉骨の必要性とともに、粉骨をしたくない場合の対応策を解説します。
■粉骨とは?
粉骨とはその名の通り、ご遺骨を細かく砕くことを言います。
粉骨の目的としてはご遺骨の容量を小さくすること、ご遺骨を手元供養品などにパッケージしやすくすること、そして散骨などが挙げられます。
散骨の方法には大きく「手作業」と「機械作業」の二つに分かれますが、どちらも約2mm以下の大きさまで細かく砕くのが一般的です。
■粉骨はよくない?粉骨への疑問と不安を解消する。
粉骨は「ご遺骨を砕く」ことから良くないと言われることがあります。
しかし、結論から言うと粉骨は法的にも宗教的にも何ら問題が無く、粉骨することでご遺骨の容量が減り、スペースを効率的に使える。ご遺骨を細かくすることでより清潔に収容できる、いろいろなスタイルで手元供養を行えるようになるなどメリットも少なくありません。
ここでは粉骨をする際によく言われる言葉に答えを出してみました。
【縁起が悪いんじゃないの】
ご遺骨を砕くことから宗教上に問題があるのでは?バチが当たるのでは?と心配される方もいますが、「粉骨は良くない」と定義している宗教はありません。
故人を供養するために行う「粉骨」ですから、縁起が悪いということはもちろん無く、むしろ手元供養品に入れて丁寧にご供養すれば故人も喜ぶでしょう。
もしどうしても不安な気持ちが消えない場合は、僧侶などに相談するか、粉骨に納得できるまで待つ方が良いでしょう。
【法律面では大丈夫?】
ご遺骨を砕く、という行為から法律に触れるのでは…と不安を持つ方もいますが、もちろん粉骨は法律違反ではありません。
確かに法律では死体破損・遺棄罪というものがあり、ご遺骨やご遺体を壊すことは禁止されています。
しかし、焼骨したあと供養を目的に行う粉骨は全く問題がありません。
死体損壊・遺棄罪(したいそんかいいきざい)
(死体損壊等)
第百九十条 死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、三年以下の懲役に処する。
これまでも供養目的の粉骨が違法とされた例はありませんのでご安心ください。
【ご遺骨を砕くなんてかわいそう】
故人を遺骨を砕くことに抵抗がある1番の理由は「かわいそうだから」でしょう。
たしかに遺骨はこの世に唯一遺された故人の体であり、故人の存在そのものなので砕いてしまうのはかわいそうと感じる人もいるでしょう。
ただ実際のところ、故人の体は痛みを感じることもなければ、「砕かれて悲しい」といった感情を抱くこともありません。
むしろ粉骨して丁寧に供養をしてもらえることの方が故人も喜ぶのではないでしょうか。
【ご遺骨は砕く行為自体に抵抗を感じる】
「法律的にも宗教的に問題がないとしても、故人の遺骨を砕くなんて…」と粉骨の行為そのものに違和感を感じる人もいます。
価値観の問題なので、無理して粉骨をする必要はありませんが、もしどうしても粉骨を行う必要がある場合は専門の業者に依頼しましょう。
■粉骨は自分でできる?粉骨キットなどはあるの?
粉骨はもちろん、ご自身で行うこともできます。
しかし火葬後の焼骨には発がん性物質である六価クロムが環境基準の数倍から数十倍含まれている場合があります。業者の場合は無害化処理を施して安全に粉骨しますが、個人の場合はそうした処理は人体にも危険が及ぶ可能性がありますので避けた方が良いでしょう。
「近くに粉骨してくれる業者がない」という場合も大丈夫。インターネットなどで専門業者に依頼すると、粉骨キットなど届き、ご遺骨をゆうパックなどで送れば、粉骨までスムーズに対応してもらえます。
■粉骨の料金はどれくらい?
粉骨の料金はそれぞれの業者が個別に設定しており、プランの内容やご遺骨の容量によっても異なります。
手作業での粉骨は機械による粉骨よりも少々高めに設定されているところが多いのですが、大切な人のご遺骨を丁寧に優しく粉骨することができます。
粉骨の料金は一般に5寸壺で2万円~4万円ていどのところが多いようです。
手元供養を行う場合、粉骨は本当に必要なのか
次に手元供養を行う際の粉骨について説明しましょう。
手元供養で自宅に遺骨を保管する際には、手元供養品に納めるために粉骨を行う場合が少なくありません。
しかし、骨壺に入れる場合は粉骨は必要ない場合もあります。また、アクセサリータイプの手元供養品などでもご遺骨をそのまま収容できるものもあります。
手元供養における、粉骨の必要性について解説します。
■手元供養で粉骨は必須ではない
「手元供養をしたいけど、粉骨するのは…」とお悩みの方、実は手元供養を行う場合、粉骨は必須ではありません。
粉骨はご遺骨をパウダー状に砕くことになるので心理的に抵抗感を抱く方もいます。
もちろん、粉骨自体は宗教的にも法律的にも問題のない行為なのですが、抵抗があるなら無理に散骨をする必要はありません。
ご遺骨を粉骨しなくても利用できる手元供養品もたくさんあります。
その中からお好みに合う手元供養品を選びましょう。
■粉骨のタイミングは自由に決められる
例えばお墓に埋葬する場合は四十九日や一周忌など、ある程度目安となるタイミングが決まっていますが、手元供養をするタイミングは決まっていません。
粉骨をするタイミングは「粉骨が必要になったとき」ですから、「手元供養をするとき」「散骨をするとき」「納骨堂に骨壺が入らなくなったとき」など、粉骨をしなければいけない事情が出来た時で構いません。
一度粉骨をすると元には戻せないので、メリット・デメリットを比較してじっくり検討してから決めましょう。
■場合によっては粉骨が必要になることも
手元供養で粉骨は必須ではありませんが、遺骨の最終的な行き先や供養方法によっては粉骨が必要になることがあります。
例えば、アクセサリータイプの手元供養品でもブレスレットやリング、宝石などの場合はほとんどの場合粉骨が必要です。
海洋散骨をする場合も粉骨をしなければ海に撒くことはできません。
納骨壇がいっぱいになって入りきれない時も、粉骨をしてブックタイプのケースに収納すれば収納量を格段に増やすことができます。
また、粉骨したご遺骨は真っ白のパウダー状になっているので、ご遺骨と一緒に旅行や外出に行きたい場合などにも適しています。
手元供養で粉骨が選ばれる理由とは?メリット・デメリットを比較
手元供養では遺骨をそのまま安置しても問題ありませんが、粉骨を選ぶケースが多いです。
なぜ手元供養では粉骨が選ばれるのか、メリットとデメリットの比較を交えて解説します。
■粉骨を選ぶケースが多い理由はメリットが多いから
手元供養では粉骨が必須ではないものの、粉骨を選ぶケースが多いようです。
その理由はさまざまなメリットがあるから。
その中でいくつかご紹介しましょう。
・粉骨をすることで遺骨のかさを1/3~1/6まで小さくできる
・業者によっては有害物質を無害にすることができる
・アクセサリーなど持ち運びできるものに加工ができる
・「ご遺骨」というイメージが薄くなり、子どもたちや来客が不安にならない。
最も大きなメリットはやはり「容量」を減らせることでしょう。骨壷の大きさを小さくしたり、ブックタイプのケースに入れたりして保管スペースを最小限に抑えることができます。
手元供養の場合は分骨したご遺骨をミニ骨壺などに納めますが、こちらにもより多くのご遺骨を収容することができます。さまざまな形や色の骨壷に納めることが可能です。
ミニ骨壺は近年では従来の骨壷のイメージを覆すような、お洒落なデザインの骨壷が多数出ています。
粉骨をすることで手元供養の選択肢も増え、インテリアや故人の好みなどに合わせて自由に手元供養を楽しめるようになります。
■粉骨には大きなデメリットもある
手元供養で粉骨が選ばれる理由はメリットが多いからですが、一方で粉骨にはデメリットもあります。
こちらもきちんと理解して選びましょう。
・火葬後の焼骨には発がん性物質が含まれているので、自分で粉骨をするのは危険。
・遺骨が骨壷からこぼれてしまう恐れがある
・粉骨によいイメージを抱かない人がいる
・粉骨を行ったら元の状態に戻せなくなる
手元供養でもっとも留意すべきデメリットは、火葬後の焼骨には発がん性物質である六価クロムが環境基準の数倍から数十倍含まれている場合があることです。
業者によっては六価クロムの無害化処理を施してくれるところもありますが、個人で粉骨をする場合は注意が必要です。
また骨壷の形状やタイプによっては、不意の衝撃によって倒れたり蓋が外れたりしてしまい、粉骨した遺骨がこぼれてしまう可能性があります。
粉骨した場合は拾うのが困難になりますし、発がん性物質の無害化を行っていない場合は無闇に触れることもできません。
また、粉骨をしたら元に戻すことはできないので、心の整理がつかないうちに行ってしまうと後悔をしてしまうかもしれません。
粉骨を行う場合は、メリットとデメリットを比較してから、後悔のない方法を選びましょう。
粉骨をしたくない場合の対応案は分骨をすること
粉骨は様々なメリットがあることを説明しましたが、心情的に粉骨を受け入れられない場合は無理する必要はありません。
「粉骨はしたくないけれど、手元供養はしたいのよね…」という場合は、分骨をすることがおすすめです。
分骨とは文字通り遺骨を分けることです。
必要な量だけご遺骨を分けて手元供養品に収蔵しますが、もちろん、残ったご遺骨に対しても何らかの対応が必要です。
また、分骨は基本的に火葬直後のお骨上げの際に行いますが、納骨後にお墓を開けて分骨することも可能。
その場合は「分骨証明書」が必要となりますので、必ず墓地管理者や行政機関にきちんとした手続きをしてから行いましょう。
■埋葬用と手元供養用に分骨をする
手元供養で分骨を行う場合、最も一般的なのは寺院や霊園に納骨する埋葬用と、自宅で保管する手元供養用に分ける方法です。
お墓・納骨堂用に7寸~5寸の大きめの骨壷と、手元供養用に2寸ほどのミニ骨壷を用意して分骨します。
手元供養をすることが決まっている場合は火葬場での焼骨の際に用意をしておくと良いでしょう。
その他に残ったご遺骨を合葬墓に埋葬する、散骨をするなどの方法もあります。
■複数人で分骨をする
骨壷を複数用意すれば、ご兄弟など複数人で分骨をすることができます。
火葬場で分骨することもできますが、いったん納骨した後に分骨することもできます。
ご兄弟がそれぞれ遠方に住んでいる場合、お墓参りが大変なのでこうした方法を選ぶ方もいます。
もちろん、複数人に分骨する場合はその数分の「分骨証明書」が必要です。
■保管用とお参り用に分骨をする
全てのご遺骨を自宅に安置する場合は、保管用とお参り用に分骨をするとよいでしょう。
遺骨は押入れやクローゼット中など、直射日光の当たらない涼しい場所に保管すれば問題ありません。
保管用は大きめの骨壷へ、お参り用は小さめのミニ骨壺へ分けて保管することで、粉骨をしなくてもコンパクトな手元供養スペースを作ることができます。
家での分骨ですので「分骨証明書」は必要ありませんが、管理ができなくなった時には一つに合わせて埋葬・収蔵することになります。
周囲の人が困らないよう、2か所に分けて手元供養をしていることをあらかじめ伝えておきましょう。
手元供養での粉骨は後悔のない選択を
粉骨にはさまざまなメリットがありますが、デメリットもあります。
手元供養で粉骨を選ぶケースが増えているとは言え、心に整理がつかない場合や、どうしても抵抗感がある場合は、無理に粉骨する必要はありません。
粉骨しなくていい手元供養品もたくさんありますし、粉骨に対して抵抗がなくなってから手元供養を始めても遅くはありません。
もちろん、粉骨することは決して悪いわけではありません。
しかし砕いてしまった遺骨は2度と元の形には戻らないので、後悔のないようしっかり心の整理をつけてから選択してください。