2023/04/14
自宅墓とは。室内で供養する自宅墓の特徴とデメリット、注意点について解説。
ワイドショーでも注目されている自宅墓とは
屋内に置いてご供養するミニサイズのお墓のこと。
近年ワイドショーなどでも話題を呼んでいる「自宅墓」とはその名の通り、ご自宅(屋内)に設置してご供養する小さなお墓です。
「手元供養」の一種ではありますが、骨壺を収納できる墓石を設置し、家にいながらにして一般墓と同じように「お墓まいり」ができるのが特徴。
・遠方に住んでいてお墓参りになかなか行けず、先祖からのお墓が荒れ放題になっている。
・お墓が欲しいが、予算が無い。
・大切な人のご遺骨と離れがたい。
・高齢になり、お墓掃除やお墓参りが負担になってきた…
など、供養に関する現代人のお悩みを解決する“新しい供養の形”として注目を集めています。
■自宅墓の種類
近年自宅墓が静かなブームになっており、それとともに機能、デザインも多様化してきました。
自宅墓は小さな御影石の中にご遺骨を入れたミニ骨壺を収納して自宅に設置するスタイルが基本ですが、納骨方法や墓石の種類、デザイン、オプションなどは様々です。
〈納骨方法〉
「全骨タイプ」と「分骨タイプ」に大きく分けられます。
「全骨タイプ」
火葬場で集骨したご遺骨のすべてを収納する方法で、その分広めのスペースが必要となります。
スペースが限られている場合は、容量を減らすために粉骨して納める方法もあります。
しかし粉骨にはカビの発生を抑えるなどのメリットがありますが、ご遺骨を細かく砕くことに抵抗を感じる人も少なくないようです。
「分骨タイプ」
分骨と文字通り、ご遺骨を1つの骨壷ではなく、複数の骨壺に分けて納める方法です。
手元供養はコンパクトで場所を取らないこともメリットのひとつですから、そのほとんどが分骨タイプです。
分骨することで限られたスペースにも安置できるようになりますし、ペンダントとして身につけたり、リビングや寝室にも安置できるなど自由度も高くなります。
自宅墓も多くが分骨タイプですが、分骨は便利なだけでなく、残ったご遺骨の行先を用意することも必要です。
残ったご遺骨の行先としては、一般墓、納骨堂、永代供養墓などがありますが、近年では海洋散骨を選ぶ人も増えています。
〈デザイン〉
ミニ墓石に名前などを彫刻するタイプ、ステンドグラスの写真立てを設置するタイプ、ご夫婦二人分のご遺骨を収納できるタイプ、全てのご遺骨を収納できるミニ仏壇タイプなど自宅墓のデザインも様々です。
家の中に設置するため、洋風のお部屋にもマッチするおしゃれなデザインのものが多いのも自宅墓の特徴です。
自宅墓、手元供養、仏壇の違いは。
それぞれに役割と意味がある。
家の中で供養する方法としては「自宅墓」「手元供養」「仏壇」などがあります。
しかしその違いを明確に説明できる人は少ないのではないでしょうか。
実は「自宅墓」「手元供養」「仏壇」はそれぞれ役割が重なる部分もあれば、異なる部分もあります。
ここではそれぞれの内容について解説しましょう。
〈自宅墓〉
自宅墓とは前述したとおり、家の中に置くことが出来る小型のお墓のことです。
家の中に置くためデザイン性が高いものも多く、見た目からはご遺骨が入っているとは分からないおしゃれなものも少なくありません。
「自宅墓」に決まった定義はありませんが、“家でお墓参りができる”ことがその最大の魅力であることから、「お墓」をイメージさせる御影石を使ったものが多いようです。
〈手元供養〉
遺骨や遺灰を入れたものを身につけたり、自宅に置いたりして身近な場所でご供養することを「手元供養」と言います。
一言で手元供養品といっても多種多様で、身につけていつも故人に語り掛けることができる「遺骨ペンダント」や、手のひらサイズのかわいい「ミニ骨壺」、家の中にすっきりと収納できるブックタイプのものなど。
それぞれの思いやライフスタイルに合わせて、故人をご供養できるのが手元供養の魅力です。
〈仏壇〉
仏壇とは本来はお寺の本堂にある仏壇(内陣)を小型にした、仏様のお住まい、いわば家の中のお寺のような存在でした。
しかし現代では、そうした信仰の象徴としてより、ご先祖様や亡くなった方々をお祀りし、語り掛けたり、ご供養をする場所としての意味合いが強まっています。
住宅事情の変化で仏壇を置くご家庭が減ってきましたが、ご先祖様や亡くなった方の冥福を祈り、語り掛け、自分が今ここにあることに感謝し、家族の絆を実感する大切な存在であることに変わりはありません。
自宅墓のメリット・デメリットを正しく理解してきちんと選ぶ
【自宅墓のメリット】
■お墓参りのために遠方に行く必要が無く、毎日お参りできる。
「お墓参りに行く」それだけでも花や線香などを用意したり、運転をお願いしたり、交通アクセスを調べたりと準備が必要です。
また、高齢の方や足腰が不自由な方などはお墓掃除はもちろん、墓所に行くだけでもかなりの負担がかかります。
自宅墓なら家の中にお墓があるので、毎日気軽にお参りができ、故人の好きな食べ物を供えたり、焼香したり、手を合わせたりして心のこもった供養ができます。
■自宅墓なら宗教宗派を問わず設置することができ、自分らしくご供養ができる。
自宅墓は宗旨宗派を問わず、またどの宗教の方にも対応できる供養方法です。
仏教徒の方は香炉やおりんを置いたり、キリスト教徒の方は十字架を添えたり、無宗教の方は故人の思い出の品や写真を添えたり。
それぞれの宗教観に沿った供養の場をオリジナルで作ることができます。
■お墓を新しく建立するのに比べて費用を抑えることができる
お墓を新たに購入する場合、一般的に100~300万円程度の費用が必要です。
納骨堂でも80~200万円程度の費用がかかり、さらにお墓も納骨堂も毎年5000円~20000円程度の年間管理費を支払わなければなりません。
しかし自宅墓であれば費用は10万円~20万円程度の安価ですし、年間管理費も必要ありません。
■故人をいつも身近に感じることができる
「お墓はあるけれど、大切な人のご遺骨と離れたくない」
「ご遺骨を暗いお墓や納骨壇に入れてしまうと故人が寂しいのではないか…」
大切な人を亡くした方、お子様や配偶者を失った方などは特に、ご遺骨をお墓や納骨堂に埋葬・収蔵することに寂しさを感じる傾向があります。
そうした際も自宅墓に分骨すれば、故人を身近に感じることができ、毎日語り掛けることもできます。
「自宅供養をしていると、故人を失った悲しみをいつまでも引きずってしまうのではないか」
と心配されることもありますが、むしろ思う存分、後悔のない供養をすることで、前向きに人生を送るきっかけになることも少なくないようです。
■ペットのご供養もできる
霊園やお寺などは宗教上の理由や周囲への配慮などでペットの埋葬ができないことも少なくありません。
しかし自宅墓なら愛するペットのご遺骨を収蔵して、毎日すぐそばでご供養が出来ます。
もちろん、ペットの場合は墓地埋葬法に抵触しませんので、自宅の庭にお墓を作って埋葬しても問題ありません。
■引越しの際も気軽に移動できる。
「引越した後お墓が遠くなってしまい、お墓参りが大変になった」
「両親が亡くなり、先祖代々のお墓の管理が出来なくなった」などなど、引越し後にお墓の管理で悩まれている方も少なくありません。
自宅墓ならお引越しの際に一緒に持参できますし、引越し先が狭くてもコンパクトに設置できますので安心です。
■いろいろなデザインがあるので、お参りをするのが楽しくなる。
お墓は四季の自然を感じながら故人に思いを馳せることができますが、一方で暗くて寂しい印象がある、天候に左右されるなどのデメリットもあります。
自宅墓は家の中に置くためリビングなどに設置しても違和感のない明るいデザインのものが多く、写真立てを置いたり、故人の思い出の品を添えたりして、楽しくお参りができることも魅力のひとつです。
【自宅墓のデメリット】
●分骨した場合、残りのご遺骨の埋葬・安置場所を用意する必要がある。
●自宅墓の管理が出来なくなった場合、中のご遺骨の埋葬先を手配しなければならない。
●ご遺骨や自宅墓の管理は自分で行う必要がある。
●地震などの自然災害や不慮の事故で、骨壺が破損したり、ご遺骨を紛失する恐れがある。
お墓から分骨して自宅墓に埋葬する際は自治体の許可は必要?
火葬場で直接分骨する場合は火葬場から分骨証明書をもらうだけでOKですが、すでにお墓に埋葬しているご遺骨から分骨する場合は、他にもいくつかの手続きが必要となります。
① 墓地の管理者に自宅墓に分骨する旨を伝え、分骨証明書を発行してもらいます。
②お墓から骨壺を取り出します。
「地上式タイプ」の納骨室ならご家族で簡単に取り出せますが、地下にご遺骨を埋葬する「地下式タイプ」の納骨室の場合は石を移動する必要があるため、石材店に出骨を依頼します。
③分骨したあと、残りのご遺骨を再び埋葬する。
証明書を発行してもらったら「カロート」と呼ばれるお墓の中の納骨室から遺骨を取り出します。
ご遺骨を分骨したあと、ふたたび納骨室に埋葬します。
ご遺骨の取り出し、再埋葬のために住職に読経してもらう場合もあります。
④分骨証明書は保管しておく。
お墓から分骨して別のお墓に埋葬する場合は新しい墓地に分骨証明書を提出しますが、自宅墓の場合はご自宅に安置するわけですから提出する必要はありません。
しかし、自宅墓を管理できなくなった場合、中のご遺骨はお墓、永代供養墓、納骨堂などに納骨することになります。
その時に分骨証明書が必要となりますので、分かりやすい場所に保管しておきましょう。
自宅墓は違法?自宅墓と法律(墓地埋葬法)の関係。
「自宅にご遺骨を置いたままにしておくことは法律的に問題は無いの?」と心配される方がいます。
果たして自宅墓は違法なのでしょうか。
その答えはもちろんNo。
お墓やご遺骨の埋葬に関する法律として「墓地、埋葬に関する法律(墓地埋葬法)」がありますが、その第4条に
「埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行ってはならない」
とあります。
つまり、墓地以外の場所にご遺骨を「埋葬・埋蔵」するのは違法ですが、自宅墓は家の中にご遺骨を置いてご供養する方法ですので違法にはならないのです。
しかし、気を付けなければいけないのが、同じ自宅の中であっても屋外にお墓を建てる場合。
庭などにお墓を建てること自体は違法ではありませんが、そこにご遺骨を埋葬することは違法となりますのでご注意ください。
購入する前に知っておきたい。自宅墓の注意点。
■設置場所を決めてから購入を。自宅墓を置くのにふさわしくない場所もある。
家の中に置いて気軽にご供養できることが自宅墓の魅力ですが、自宅墓を置くのにふさわしくない場所もあります。
例えば湿気が多い場所はご遺骨にカビが生える可能性があり、衛生的にも好ましくありません。
また、自宅墓の多くが御影石を使用しているため、コンパクトであってもかなり重量があります。
万が一落としてしまうと骨折などの大けがにつながりません。
自宅墓の設置場所には、日常生活の中で動きが少ない場所、落下の危険性がない場所、子どもやペットなどの手が届かない場所を選びましょう。
■分骨タイプの場合は残ったご遺骨の行先の手配が必要!
自宅墓は全骨タイプと分骨タイプがありますが、最近の自宅墓の多くが「分骨タイプ」です。
分骨タイプの自宅墓の場合、ご遺骨の一部を取り出して自宅墓のミニ骨壺の中に収蔵して供養しますが、問題は残ったご遺骨。
ご遺骨は前述した「墓地埋葬法」によって墓地以外の区域に埋葬・埋蔵は禁止されていますので、残ったご遺骨についても埋葬・収蔵先を用意する必要があります
残ったご遺骨の埋葬・収蔵先としては一般墓、永代供養墓、納骨堂、散骨などがありますが、別の骨壺に入れたまま自宅に安置することも可能です。
しかし自分に万が一のことがあった場合に周囲の方が困らないよう、ご遺骨の埋葬・収蔵先をあらかじめ決めておく方がよいでしょう。
■家の中にご遺骨を置くことに抵抗がある方も…。ご家族に必ず相談を。
ご遺骨の埋葬方法についてはご家族・ご親族の中でも意見が分かれることが少なくありません。
「自宅墓にしたものの、親戚に“家にご遺骨を置いたままだと故人が成仏できない”と言われて悩んでいる…」という話もよく耳にします。
日本の仏教では「故人は四十九日で成仏する」と捉えられていますので、成仏できないということはありません。
しかし、こうした価値観の違いは説明しても納得してもらえないことが少なくありません。
あとあと後悔しないように、周囲の方に相談してから購入しましょう。
今注目を集めている、自宅墓「おくぼ」の魅力を解説
自宅墓の中でも近年人気を集めているのが自宅墓「おくぼ」です。
おくぼはミニタイプの骨壺を墓石用の御影石ですっぽりと包み、さらにステンドグラスの写真立てを設置したとてもおしゃれな自宅墓です。
自宅墓おくぼの特徴を解説しましょう。
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お部屋の中に置けるB5サイズの小さなお墓です。
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墓石、2寸壺、ステンドグラス写真立てをセットにして税込90,000円と大変安価です。
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分骨したご遺骨をそのまま入れることができます。
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黒御影石と桜御影石の2種類から墓石を選ぶことができます。
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お好きなステンドグラスのデザインを選ぶことができます。
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オプションで手元供養にぴったりの仏具も用意しています。
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樹木葬墓地での永代供養もセットにできます。
【まとめ】自宅墓は現代人の供養の課題を解決する
“これからの時代”の供養方法
自宅墓にはメリット、デメリットがあることを解説してきましたが、分骨した際のご遺骨の埋葬・収蔵先さえ確保できれば圧倒的にメリットの方が多いのが分かります。
核家族化が進む中、お墓の管理ができない、お墓参りに誰も来ない“無縁墓”が社会問題にもなっていますが、決して「現代人は亡くなった人を供養する思いが無くなった」わけではありません。
お墓参りに行きたい…故人をきちんと供養したい…しかし時間や費用が無い…
そんな現代人の悩みと社会的な課題の両方を解決するのが「自宅墓」なのです。
しかし、ご家族・親族の中にはご遺骨を家に分骨することを反対する人もいます。
一緒に住むご家族には必ず相談して、後悔のない自宅墓選びをしてください。
河野 文
(終活カウンセラー1級、お墓ディレクター2級)